『子どもから教えられること』
雲一つない青空の日だった。
5歳の娘が鼻歌を歌いながらご機嫌良く描いた絵。
見ると空は真っ赤なクレヨンで塗りつぶされている。
私はギョッとして、反射的に娘に向かって叫んだ。
「ほら、ほら。よ~く見てごらん。お空は赤色ではなくて、青い色よ」と。
すると娘はうるさそうな表情をして
「ママには青色に見えるけど、 私には赤に見えるから、これでいいの!」
と言った。 絵を書き続けている娘の側で
" 空は青い方が綺麗だし、ステキだと思うけど " と、 複雑な気持ちで見ていたら
「お母さんは黙ってて、何も言わずにそこにいるだけでいいの」
と、 まるで新鋭画家(?)きどり。
" 余計な口を出して悪かったわね。
へえ、そうなんだ。 今、あなたにはあの青い空が赤く見えているのか。
へえ~、 これが子どもの想像力っていうことなのか "
と、私は驚くばかりだった。
また、ある日のこと、3歳の長男が新しい自転車を買ってもらったとき、
補助車を外してくれと頼んだ。 私は、
「ムリよ。あなたは小さいし、まだ補助車がないと乗れないの!
倒れて大怪我でもしたらどうすんのよ」
と言い聞かせた。
「大丈夫だって。ボク、ちゃんと乗れたよ。
優ちゃん(近所の遊び友だち)の自転車にホントに乗れたんだよ」
息子は何度も同じ事を言って、しつこかった。
私はうんざりして
「乗れないっていってるでしょ。自転車って難しいんだよ。乗れるわけない」
と、突っぱねた。
ところが、である。
「ママ~、見てよ、ボク、ホントに乗れるでしょう」
ナント、優ちゃんの補助車のない自転車にちょこんと乗って、
スイスイと走っているではないか! とても、信じられない。想定外の光景だった。
「えっ~、すご~い。乗れたんだ!」
あの時の長男の得意げな表情は、25年経った今でも忘れられない。
子どもが小さい頃、私にはこんな失敗が実に多かった。
ひとりよがりで勝手な思い込みや決めつけが多かったからである。
しかし、子どもたちは、私の想像を越えるようなことを次々とやってのけ、
私は子どもたちから多くのことを教えられた。
その度に子どもに対する見る目が変わっていったのである。
そして、やがて思いこみや決めつけもしだいに少なくなっていった。
どんなに小さな子どもであっても、その子なりの気持ちがあり、 その子なりの思いがある。
それに子どもの可能性といったら「スゴイ!」の一言に尽きる。
思えば、子どもの能力は、親の私をはるかに越えていることばかりであった。
今では自然に「あなたならできる!」と言えるようになった。
ときに、子どもからは
「お母さん、そんな無責任なことを簡単に言わないで欲しいわ」なんて、
叱られることもあるが、信じているとホントにできるのだから不思議なものである。
さて、大人になった子どもたち、
これからどんなことを教えてくれるかな~?